任天堂の宮本茂氏に学ぶ「複数の問題を一気に解決するアイデア」の重要性

「岩田さん」で知った任天堂の宮本氏のアイデアに対する考え方

 以下のツイートが反応大きかったので、少し深堀りしてみたいと思います。

 なお、この宮本氏の言葉のエピソードは「岩田さん」という書籍で知りました。この本は、自分が折に触れて何度も取り上げているオススメの本です。

 何か問題あるとき、だいたいトレードオフになることが多いです。具体的には、性能高くするためにお金が高くなる、速度が遅くなるとかそんな感じですね。あっちを立てばこっちを立たずは世の中の常ですし、そういった問題で妥協点を地雷原をくぐり抜けるかのように探し続けるのが多くのプロジェクトの常だったりします。

 ただ、こういったトレードオフのとき、両方解決する手段がないか頭を一度は捻ってみるようにしています。もし問題を解決するようなアイデアが得られたら、とてつもない価値があることを自分自身も経験からよく知っているからです。

任天堂のイノベーション文化

 任天堂には、複数の問題を一気に解決するアイデアを生み出す文化が根付いています。その代表的な例として、横井軍平氏の「枯れた技術の水平思考」という考え方があります。

 横井氏は「枯れた技術」、すなわち十分成熟した技術を他の用途に転用する「水平思考」によって大きな価値を生み出す方法を提唱しました。これは、最新技術を追い求めるのではなく、既存の技術を新しい視点で活用することで、コストと品質のトレードオフを解決する優れた例です。

岩田聡氏のMOTHER2開発エピソード

 任天堂の元社長・岩田聡氏も、複数の問題を一気に解決するアプローチの実践者でした。特に有名なのは、開発が破綻していた「MOTHER2」というゲームの立て直しに関するエピソードです。当時HAL研究所の社長兼プログラマーだった岩田氏は、炎上していたMOTHER2の開発現場を立て直すために呼ばれました。ソフトウェアの現状を分析した岩田氏は、プロデューサーの糸井重里氏に対して伝説となったセリフを告げます:

「今あるものを活かしながら手直ししていく方法だと、2年かかります。1から作り直していいのであれば、半年で作ります」

 糸井氏が「1から作り直す」という決断を下した後、岩田氏が最初に取り組んだのは「環境整備」でした。開発者が効率的に開発を行えるツールやバージョン管理ツール、当時はまだ一般的ではなかったメールシステムを整えたのです。

 岩田氏は凄腕のプログラマーでしたが、自分がコードを書くことよりも、「環境整備をすることがプロジェクト全体のパフォーマンスを高めて、一番結果を出せる」と判断しました。つまり、開発速度と品質というトレードオフを、環境整備という第三の視点から解決したのです。

 結果として、岩田氏はMOTHER2プロジェクトを見事に立て直し、絶望視されていたゲームの完成を実現しました。このエピソードは、複数の問題を一気に解決するアプローチの一つの例といえると思います。

トレードオフを超えるための思考法

 どうすれば「複数の問題を一気に解決するアイデア」を生み出せるか、以下に、そのための思考法をいくつか紹介します。

1. あえて制約を課す

 あえて制約を自ら課してみることで、活路を見出します。制約を限定と言い換えてもいいかもしれません。ある限定条件では性能を発揮できる、例えばイニシャルDで秋名山のコーナーを溝落としでクリアする(この例え伝わるのだろうか…)。ハンターxハンターの制約と誓約の方が分かりやすいかもしれませんね。必要なのは覚悟かもしれません。

2. 異なる視点を組み合わせる

 色々な観点は重要ですね。特に違う分野からアイディアを持ってくるのは重要です。遠ければ遠いほど効果的だったりします(その分発想の飛躍が必要で、難易度が高かったりしますが)。

 チーム内で多様なバックグラウンドを持つメンバーがいること、その意見を取り入れることが大切だったりします。名著「アイデアのつくり方」でも、「アイデアとは既存の要素の組み合わせだ」って書いてありますしね。

3. 余裕を作る

 これが一番むずかしいいかもしれませんね。複数の問題が切羽詰まっている現場では、アイデアを考える時間が全くないこともよくあります。残念ながらすべての問題を解決することは多くの場合不可能です。重要な問題にフォーカスしつつ、その問題を解決するための時間を作り出す。なかなかこれが現実だとうまくいかないところですね。

まとめ

 「良いアイデアというのは、複数の問題を一気に解決するものである」という言葉について深堀りしてみました。なかなか難しいですけど、何かトレードオフの問題があったときは「AかBか」という二択ではなく、「AとBを両立させる方法はないか」と一度立ち止まって考えみるといいことあるかもよ、という話でした。何かの参考になれば幸いです!

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