全ての物語は「行きて帰りし物語」

三谷幸喜さんと大塚英志さんの考える物語の共通構造

 先日、三谷幸喜さんの興味深いインタビュー記事を読みました。「物語の9割は自分探し」という話で、桃太郎から鬼滅の刃まで、どんな物語も結局は主人公の自分探しの旅だということでした。

 これを読んだとき、大塚英志さんの『ストーリーメーカー 創作のための物語論』で読んだ内容と共通する部分があって面白いなと思ったので、簡単に紹介してみます。

「同じ答え」への到達

 表現は違うものの、同じことを言っていて面白いなと思いました。大塚さんは評論家(作り手でもありますが)として構造を分析して体系化したと思うのですが、三谷さんも、多分同じように過去研究したことがあるんじゃないかなと思います。

 大塚さんは物語の基本構造を2つに分けています:

  • 「欠落したものが回復する」パターン
  • 「行って帰る」パターン

 特に「行って帰る」(いわゆる「行きて帰りし物語」)については、キャンベルの英雄神話の「出立→イニシエーション→帰還」構造を引用して、これが「それまでの自分から新しい自分に移行していく過程」だと説明しています。まさに三谷さんの「自分探し」そのものですね。

「行きて帰りし物語」

 そもそも「行きて帰りし物語」は、J.R.R.トールキンの『ホビットの冒険』(指輪物語の前日譚)の副題がこの名称で有名になりました。行きて帰りし物語として有名なものは以下でしょうか。

  • 指輪物語・ホビットの冒険
  • 桃太郎(鬼退治にいってもどってくる)
  • ギリシャ神話のオルフェウス(冥界に妻を連れ戻しに行き、帰って来る)
  • 古事記のイザナギ(黄泉の国に妻を連れ戻しに行き、帰ってくる)
  • 千と千尋の神隠し(異世界に行き、現実世界に戻る)
  • 不思議の国のアリス(夢から覚める)
  • オズの魔法使い(カンザスに帰る)

 ただ、行きっぱなしの物語も色々ありますね。異世界転生ものも、最近のものはほとんど元の世界にはもどらないですし、ジブリだと魔女の宅急便や、もののけ姫は行きっぱなしですね。物語の中で描かれていないだけという見方や、発展型とも言えますが。

 そういう意味だと、三谷さんの「自分探し」という視点は、結構汎用的な考え方かもしれませんね。

まとめ

 三谷さんの「自分探し」という発言、勝手に補足してみたという記事でした。個人的には、物語の基本形は「行きて帰りし物語」かなと思っています。人生だって、どこから来て、どこへ行くのか分からないだけで「行きて帰りし物語」そのものですから。

関連記事