AI上司とローカルLLM部下でトークンを節約できるか試した

AIの利用枠を使い切りました

 先週、契約しているChatGPT Proの利用枠を使い切りました。月額200ドルで、今まで使い切ることなかったのですが、先週はAIアシスタントソフトの「xangi」の開発やAIでDJ・VJするソフトを作ったりしていて見事に上限へ到達しました。

 使えなくなったのは2日ほどだったのですが、これがなかなかつらかったです。以前、音声配信で自分のことを「AIジャンキー」と表現していたのですが、AIが使えなくなると本当に不安になってきて手が震えきたので、ほぼ中毒者でした。

 この体験をきっかけに、トークンの節約やローカルLLMの活用を本気で考えてみました。

AI動作環境の整理

 私は最近、NVIDIAのDGX SparkでQwen3.8-27B-NVFP4(以降Qwen3.8)を動かしています。かなり優秀なモデルなのでChatGPTが使えなくなったときも「ローカルLLMがあるから大丈夫」と思っていたのですが、実際に代役を任せてみると、最初は全然ダメでした。

 「こんにちは」の返信に5分弱かかる始末です。到底実用できません。

 原因を調べると、モデルだけの問題でなく、AIを働かせる環境が複雑になりすぎていました。長いシステムプロンプト(AGENTS.md)、大量のツール、大量のスキル、積み上がった例外ルール。GPT-5.6 Solのような高性能なモデルは、多少散らかった環境でも空気を読んで仕事を進めてくれます。そのため、環境側の問題が表面化していなかったのです。

 人間の組織でも、能力の高い人が個人技で何とかしているうちは、手順や環境の問題が隠れがちです。そこへ新しい人が入ると急に仕事が回らなくなり、初めてオンボーディングや道具の整備が必要だと気づきます。AIでも同じことが起きるのが面白いですね。

 そこで、最初に渡す指示を圧縮し、使うツールを整理し、仕事の入口を分かりやすくしました。これはローカルLLMのためだけではなく、高性能なモデルの迷いを減らし、入力トークンを削減する効果もあります。

 今回使ったモデルやDGX Spark上での動かし方、推論エンジンごとの実測結果は、以下の記事にまとめています。

GPT Solを上司Qwenを部下にしてみる

 次に試したのが、GPT-5.6 Solを監督役にして、実際のコーディングをQwen3.8へ委譲する構成です。高性能なクラウドAIには仕事の設計と検収を任せ、時間はかかるけれど手元の電気代だけで動くローカルLLMに作業してもらいます。

 いわば「AI上司とローカルLLM部下」です。

 この構成を試したきっかけは、以下のtoyoshiさんの投稿です。

 Gitの操作等も含めてQwenに任せるのは不安があったので、GPTと組み合わせて使うのは実用的かもと思いました。

 ところが最初は、むしろGPT Solのトークンが増えました。何が起きていたかというと、GPT SolがQwenに雑に仕事を丸投げしたあげく、上がってきた成果物を最初から全部読み直し、間違いを自分で修正していました。典型的なヤバマイクロマネジメント上司ですね。

 このままではまずいと、作業範囲を小さく切り、変更してよいファイルを限定し、テストや画面表示などの受け入れ条件を先に決めて、上司は実装の全過程を追いかけず、最後に条件を満たしたかを確認するような形にしました。不合格なら自分で直さず、具体的な理由を添えて部下へ差し戻します。

 実際の人同士の開発と似せた形です。

本当にトークンを節約できたのか

 Podcastを収録した時点では、別の試行結果から「監督役のトークンを約80%削減できた」と話しました。ただし条件を十分に揃えた比較ではなく、品質への影響も未検証だったので、その後に専用の小さな開発課題を作って比較し直しました。

 同じ初期状態から、ミッション管理画面を作る課題をGPT Solへ直接頼む場合と、GPT SolからQwenへ委譲する場合を比較しました。両方とも、テスト、変更ファイルの制限、デスクトップとスマートフォンでの表示、データの保存と再読み込みまで確認しています。

 AIエージェントソフトとしては自作ソフトの「xangi」を使っています。最初はQwenの推論用バックエンドに「OpenCode」を使っていましたが、最終的には「xangi」独自のローカルLLM用バックエンドを使って評価しました。

 比較条件、課題、独立したテスト、委譲用スキルは、以下のリポジトリで公開しています。結果を再確認したい方や、別のモデルで試したい方は参照してください。

 GPT Solが直接実装した「Agent Mission Control」です。ミッションの追加、担当者や優先度の変更、進捗の移動、ブラウザへの保存ができます。

 こちらはQwenが実装したものです。同じ仕様と受け入れ条件を渡していますが、見た目や情報の配置にはモデルごとの違いが出ました。

 1回ずつの有効な成功例では、以下の結果になりました。

GPT Solが直接実装
・実装時間: 148.2秒
・親の非キャッシュ入力+出力: 27,703トークン
・テスト、画面確認: 合格

Qwenへ委譲
・子の実装時間: 540.8秒
・親の非キャッシュ入力+出力: 16,249トークン
・直接実装に対する削減率: 41.3%
・テスト、画面確認: 合格

 完成品質は、今回用意した受け入れ条件では同等でした。親となるGPT Solの非キャッシュ入力と出力は41.3%減った一方、Qwenの実装時間は約3.65倍になりました。

 また、Qwen側でも大量のトークンを使っています(非キャッシュ入力+出力で42,389トークン)。こちらはローカルで動くためクラウドの利用枠は消費しませんが、処理時間と電気は必要です。今回は各方式を3回成功させた中央値ではなく、それぞれ1回の成功例です。Qwenが実装を始める直前に終了してしまう試行もあり、結果のばらつきも大きい状態でした。

 現時点で言えるのは、「完成品質を保ったまま、ローカルLLMの活用で指示役モデルのトークンを4割くらい減らせる可能性はある。ただし時間はかかる」くらいでしょうか。

まとめ

 GPT Solを上司、Qwenを部下にしたマルチエージェント構成で、クラウド側のトークンを節約できるか試した話でした。今回の単発比較では、完成品質を保ちながら親の非キャッシュ入力と出力を41.3%減らせました。その代わり、実装には約3.65倍の時間がかかっています。

 今回やってみて、マルチエージェントによるAI活用は、組織設計に近いと感じました。高性能なAIを何に使うのか。ローカルLLMへどこまで任せるのか。完成とはどの状態なのか。失敗したときは誰が直すのか。ここの設計が難しいのが、なんというか人間っぽいですね。

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