オセロは解かれた「Othello is Solved」

図はOTHELLO IS SOLVEDより引用

オセロが解かれてチェッカーに思いを馳せる

 オセロが解かれたようです。お互いに最善手を打ち続けると引き分けになるとのこと。

 PFNの滝沢さんの仕事とのことで、凄いですね。論文も公開されています。ちなみに、自分はこの分野に凄い詳しいという訳でないので、論文読んでみましたが「凄そう!」くらいしかコメントできないです(笑)

 なので、解説とかはできませんが、思ったことをつらつらと書いてみたいと思います。詳しいことを知りたい方は、この解説記事が良さそうです。

 論文が話題になった後に、以下みたいなツイートをしました(わりと反応がありました)。

チェス「オセロがやられたようだな…」
将棋「やつは、四天王の中でも最弱…」
囲碁「コンピューターに解析されるとは、二人零和有限確定完全情報ゲームの面汚しよ…」

 ただ、実はオセロの前に既に解かれた二人零和有限確定完全情報ゲーム(簡単にいうと、運のような不確定要素が入らず勝敗が決する2人で対戦するゲーム)として有名なものに「チェッカー」があります。

 チェッカーは、チェスを少し簡単にしたようなゲームです。多分、日本だと知っている人もプレイヤーもかなり少ないのではないかと思います。

チェッカーについて書かれた書籍「盤上の夜」

 私がそんなチェッカーを知ったのは「盤上の夜」というSF小説です。様々なボードゲーム(麻雀、囲碁、将棋)を題材にした小説なのですが、2話目の「人間の王」という作品に「チェッカー」と、実在の人物、チェッカーの無敗のチャンピオン、マリオン・ティンズリー氏とAIとの死闘が描かれています。この作品に出てくるティンズリー氏とAI開発者シェーファー氏は実在の人で、ノンフィクションを下敷きに作られた作品のようです。

 ちなみに、チェッカーの場合の数はおおよそ10の20乗、オセロが10の28乗と言われています。付け加えると、チェスは10の120乗で、将棋は10の220乗、囲碁は10の360乗です*1

 そして、その場合の数の少なさからチェッカーは、囲碁や将棋のはるか昔、1994年(30年ほど前)に人間のプログラムと世界チャンプを破りました(正確には、対局途中、チャンプの体調不良により不戦敗)。そして、その15年後の2007年に、プログラムを開発したシェーファー氏がチェッカーを解いています。そのときに投稿された論文が「Checkers Is Solved」で、今回発表された「Othello is Solved」のベースとなった論文です(論文にもそのように記載があります)。

 「Othello is Solved」のアブストラクトの「 This paper announces a significant milestone: Othello is now solved」の部分は、Checkers Is Solvedのアブストラクトの「This paper announces that checkers is now solved」との対比になっていて、リスペクトが感じられます。

 なお補足すると「解かれた」という状態にはstrongly solved, weakly solved, ultra-weakly solvedの3つがあるようです。チェッカーもオセロも両方ともweakly solvedとなります。

コンピュータがゲームを解くことでゲームは死ぬのか?

 「盤上の夜」では、チェッカーが解かれたことで「チェッカーというゲームは葬り去られた」と表現されていました。自分が気になるのは「コンピュータに解かれたゲームは死んでしまうのか?」ということです。オセロも、解かれたことで死んでしまうのでしょうか?

 オセロの元世界チャンピオン村上健さんは、2017年の記事で「完全解析されたあとのオセロはどうなると思いますか?」という質問に対して「何も変わらないと思います。」とはっきり述べています。また、チェッカーに関しても、調べたところ、解かれた後も大会などは行われているようです。

 将棋や囲碁で、AIに人間が負けてもプロ同士の対局が続いているように、コンピュータが解くことは、ゲーム性にはそれほど影響は与えないのかもしれません。その一方で、すでに最適な解がわかっているという状態で、人は本当に変わらず情熱を燃やし続けられるのか?最適解という誘惑から逃れられるのか?という疑問もあります。

 オセロが解かれたことで、オセロというものがどう変わるのか、それとも変わらないのか個人的には興味があります。その変化が、チェスや将棋・囲碁が解かれたときの変化の試金石にもなるのではないかなと思います。ただ、計算量的には解かれるのは、まだ先かもしれませんが(自分が生きている間は難しいかな?)。

まとめ

 オセロが解かれたこと、チェッカーの話、コンピュータがゲームを解くことに関して色々考えたことを書きました。

 そういえば、将棋の羽生善治さんは「将棋が完全解明されたときはどうするんですか?」と問われたときに「コマの動きを変えれば良い」と平然に答えたという逸話があります

 チェッカーのチャンピオン、ティンズリーも「コンピュータに勝てるか?」と問われたときに

「私は勝てる。ソフトのプログラマーは人間だが、私のプログラマーは神だから」

 と答えたと言われています。解がある以上、勝つのは不可能に思えますが、ティンズリーが生きていたら、ひょっとしたら羽生さんが言ったようにあっさりゲームのルールを変えてAIとの戦いを楽しみ続けたのかもしれません。

参考リンク

オセロの必勝法が見つかった件 | やねうら王 公式サイト
weakly solvedの解説の補足に

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