岐阜おおがきビエンナーレ2019でAIが人間の創造性を拡張する可能性を感じてきた

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岐阜おおがきビエンナーレ2019に行ってきました

 IAMASで行われた「岐阜おおがきビエンナーレ2019」というイベントに行ってきました。

 ビエンナーレという言葉は、2年に一度開催される芸術祭という意味のようです。トリエンナーレの方がよく聞く気がしますが、こちらは3年に1度の芸術祭とのことです。はい、ついさっきググって知りました。

 おおがきビエンナーレ2019がどういうイベントかは、以下の公式サイト参照下さい。

 開催趣旨を上記サイトから一部引用します。

今新しい表現はどこから生まれてくるのでしょうか。情報化社会が進むにつれて、あらゆるものの創作や流通のプロセスが変化しています。個人が情報化され、多層なネットワークが発達する中で、それらを再結合する力が求められているのです。

岐阜おおがきビエンナーレ2019では、このような問題意識から、公共圏としての制作環境に注目します。

 難しいですね。私もさっぱり意味が分かりません(笑)

 ただ、メインの出展者の1人が「Ogaki Mini Maker Faire」を主催しているIAMASの小林 茂先生ということと、展示内容が人工知能の新たな在り方を探求するメディアアートということで、とても面白そうなので興味本位で見に行きました。

 多分、アートに造詣が深い人が多く行くイベントなのだと思いますが、こういうミーハーな人が1人くらい紛れていても大丈夫なものと信じています(笑)

おおがきビエンナーレ2019展示「Archival Archetyping」

 色々な展示があり、それぞれ興味深くかったのですが、理解が追いつかないものや、うまく言語化できないものが多かったため、今回は小林先生が中心となっているプロジェクト「Archival Archetyping」関連の展示を中心に簡単に紹介します。

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 会場はおなじみソフトピアジャパン

Qosmo

 Google IO 2019でAI DJを披露した徳井直生さんのプロジェクトであり、会社名でもあるQosmo。AIを使った新しい表現に挑戦しています。

 最初に目を引いた作品は、ボタンを押してマイクに向かってパーカッシブな音を発すると、ディープラーニングで音の分類と、メロディ(MIDIパターン)の生成を行うもの。常に新しいビートが生成されていきます。外観は以下です。

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 人の顔があるので、少しモザイク入れています

 次に、ディープラーニングでノイズから新しいサウンドを生成する試み。

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 Maxのプラグイン上でディープラーニングの学習から、音楽生成ができるものも。   f:id:karaage:20191207130056j:plain:w640

 ソフトはGitHubで公開されています。

 ここで主に使われている技術はVAE(Variational Autoencoder)と呼ばれるもので、ディープラーニングを使った生成モデルです。詳細は、以下あたりの記事が非常にわかりやすかったです。詳しく知りたい方は参照ください。ディープラーニングのオートエンコーダーがわかる人は、すんなり理解できると思います。

Variational Autoencoder徹底解説 - Qiita

PyTorch (11) Variational Autoencoder - 人工知能に関する断創録

 ディープラーニングの生成技術だと、GANと呼ばれるものも有名です。画像だと、VAEよりGANの方がハッキリした画像が生成できるので、最近はGANが人気です。

 音楽だとおそらく画像ほど求められる解像度がシビアではないので、VAEでも良いのかもしれませんね(人間の可聴域が20kHz程度なので)。あと、リアルタイム性が必要なので、生成速度の点からも軽いVAEが良いのかもしれません。

 GANは、学習コストも高いですしね(時間がかかるし、うまくいかない場合もある)。GANに関しては、以前記事を書いたので、興味ある方は以下記事も参照ください。

モランディの部屋

 続いて、自分としては一番楽しみだった展示。モランディの部屋です。

f:id:karaage:20191207124518j:plain:w640  モランディの部屋

 モランディというのは、静物画ばかりを好んで描いた割とマニアック(?)な画家らしいです。

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 モランディの絵。大体こんな感じの絵ばかり

 この絵と、平坦なオブジェの関係をディープラーニングで学習させて、平坦なオブジェからモランディの絵を生成していました。

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 左にある額縁の中は、人工知能で動的に生成されています

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 右側にあるオブジェは、カメラで撮影されていて、GPU入りのPCに送られて、ディープラーニングで画像変換される 

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 動画だとこんな感じ

 オブジェを入れ替えると同時に、モランディ風の絵が生成されていきます。

 技術的には「pix2pix」とのことでした。「pix2pix」に関しては、以前私も試しているので詳しく知りたい人や、自分も試してみたいという人は以下記事参照下さい。

 ボーッとみていると、作家の創造性って一体何なのかな?と結構不思議な気持ちになってきます。

まとめ

 岐阜おおがきビエンナーレ2019に行き、小林先生の展示を中心にみてきました。ちなみに、当日なんと偶然小林先生が会場にいらっしゃって、生解説付きで作品を見るという幸運に恵まれました。こんなに贅沢な作品鑑賞をしたのは自分くらいではないでしょうか(笑)

 正直、アートに造詣が深くないので、理解できてない部分も多い(大半かも)と思いますが、AIが人間の創造性を拡張する可能性というテーマは自分自身も非常に共感する部分多かったので、色々刺激になりました。AIと人間の協働というのは、近い将来非常に重要なテーマになってくるのじゃないかなと思います。

 他、分かりやすいところだと、作品の展示の仕方は凄い重要だなと感じました。「VAE」や「pix2pix」という技術自体は、進化の速いディープラーニングの分野では、ある意味枯れた技術になりつつありますが、その技術を使う意味づけや見せ方によって、大きくその技術の可能性は広がるのだなと思いました。

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