「Pythonで儲かるAIをつくる」はビジネス向けの超実践的な機械学習本でした

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「Pythonで儲かるAIをつくる」を読みました

 日経BP様より「Pythonで儲かるAIをつくる」を献本いただきました。筆者の赤石さんは、日本IBMで働く、本職のデータサイエンティストです。赤石さんの執筆したAI書籍の本は3冊目4冊目になります。赤石さんに関して、詳細はIBMの以下ブログ記事が詳しいです。

Pythonで儲かるAIをつくる

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Pythonで儲かるAIをつくる

Pythonで儲かるAIをつくる

AI関連書籍三冊目を出版したIBM赤石雅典に聞く「AIと仕事と執筆」 | IBM ソリューション ブログ

 赤石さんが書いた本は、いずれも基礎から丁寧に説明してあり分かりやすい内容です。特に「ディープラーニングの数学」は社会人になってから、必要に迫られてディープラーニングに必要な数学をやりなおしたい人にとっては、非常に助けになる良書だと思います。赤石さんの過去の書籍は、両方ともレビューを書いていますので、詳しくは以下記事参照ください。

 ブログで本を紹介したご縁で、少しだけ赤石さんとネットでやりとりをしたこともあるのですが、その内容も、書籍を読んで想像した通りの非常に丁寧で誠実な方でした。そんな赤石さんが「儲かるAI」というタイトルの本を出すということで

「AIでFX予想にハマってボロ儲けして、人が変わってしまったのだろうか?」

 と心配したのですが、本を読んでそんなことは無いことが分かり安心しました。本書は、ビジネス向けの非常に実践的な内容の良書です(タイトルは、きっと深い事情があるのでしょう)。

「Pythonで儲かるAIをつくる」はGoogle Colaboratoryで実践しながら理解するのがベスト

コードがGoogle Colaboratoryに正式対応

 本書では、以前までの本と同様、サポートサイトとしてGitHubのリポジトリが用意されています。

 前書までと異なり、今回の本はGoogle Colaboratoryで実践することを前提にGoogle Colabに対応したNotebookが用意されています。そのため、環境構築不要で誰でも簡単に実践できるようになっていてコードを実行しながら本を読むことで理解を深めることができます(Google Colaboratoryを知らない方は、こちらの記事を参照ください)。

 本を買おうか迷っている人は、本を読む前に、コードを実行して雰囲気を掴んでみるのも良いかなと思います。コード実行するとき、書籍では一回Notebookをダウンロードからアップロードする方法が書かれていますが、直接GitHubのリポジトリを読ませる方法を使うとダウンロードする必要もなく、すぐ試せるので便利です。以下の記事の「GitHub上のJupyter NotebookファイルをGoogle Colaboratory上で実行」という項目を参照ください。

書籍で取り扱う技術

 書籍で主に扱う内容は、幅広い機械学習手法によるデータ分析です。ディープラーニングに関しては、ほとんど出てきません(少しだけ浅い層のニューラルネットワークが出てくるくらいです)。なので、ディープラーニングで画像認識を期待している人は本書は買わない方がよいでしょう。

 基礎的な回帰から、Kaggleでよく用いられるXGBoost、Facebookの時系列分析のライブラリ「Prophet」まで、幅広い手法が取り上げられています。分析に使用するデータセットは、タイタニックやIrisなどの有名なデータ分析用のデータセットだったり、解決するタスクも企業の売り上げ予測といった、実際のビジネスで使うことを意識したものとなっています。おそらく、本書の読者が、実際のビジネスで使っているデータと差し替えてすぐ分析することを意識しているのではないかと思います。

 分析の内容は、例えばデータ分析の項目ではコードを実行すると、簡単に以下のような綺麗なデータ可視化が実現できます。

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 書籍を読みながらNotebookを一通り実行すると、機会学習で実現できる分析内容の知識がついてき、こんなデータがあればこんな分析ができそうだという自分の引き出しが増えていく実感が得られる思います。Notebookに自分が解きたい問題を入力して、自分なりの工夫をして解くと、どんどんノートが積み重なっていき、自分の武器が増えていくと思います。

 また、書籍では比較的基礎的な内容しか触れられていませんが、サンプルコードは、かなりレベルの高い内容まで補完されているので、初心者だけでなく中級者以上の方も、書籍とコードをじっくり読み込むと、復習になるのはもちろん、何かしら新たな発見があるかと思います。

この本の本当の狙い?

 ここからは、書籍を読んだ私の勝手な想像ですが、恐らく筆者の赤石さんの務めるデータ分析の大企業には、明らかにAIが分かってない企業から「AIを使う以前の問題」「到底現在の機械学習では実現できない問題」「逆にあまりに簡単過ぎて引き受けづらい問題」が持ち込まれて困っているのではないでしょうか。私も、風の噂で身近な大きな会社が「とりあえずAIだ!」という上の人の声をうけ、何の準備も無くデータ分析の大きな会社に丸投げして、多大な時間とお金を浪費し、進撃の巨人のように「何の成果も得られませんでした!」と報告して終わったという話を聞いたことがあります(あくまで噂です)。

 「それでお金を貰えるなら良いじゃ無いか」という声もあるかもしれませんが、せっかくお金や時間をかけるなら、社会的に価値のあることをすべきですし「AIは使えない」という「AI懐疑論」が多くの会社で増えると、長い目でみるとAIで問題を解決する側の企業も先細りとなり、苦しむことになります。この本は、そんな不幸を少しだけでも減らすために、少しでも多くの人が本書を読んで機械学習の最低限のリテラシーをつけて、不要な不幸を減らして欲しいという筆者の心の叫びも込められているのではないかと勝手に感じてしまいました(繰り返しですが、あくまで私の想像で、本にそう書かれているわけではありません)。

まとめ

 「Pythonで儲かるAIをつくる」を読んだ感想を書きました。この本を読んだ後、たまたまTwitterで以下のような意見を目にしました。

 たしかにその通りだと思います。その意味で、本書で学べるような機械学習の実践的な内容は、ビジネスで怪しげな会社に騙されないための基礎リテラシーをつけれる本ではないかと思います。その意味で、本書の名前は「儲かるAI」というより「騙されないためのAI」「ムダ金を使わないAI」といった名前もふさわしいかもしれないなと思ったりしました。

 機械学習でのデータ分析に興味ある初心者から、すでに実践している中級者以上の方まで、データ分析に関わる多くの人に幅広く役立つ本、オススメです。

Pythonで儲かるAIをつくる

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