日本版ファクトフルネス「シン・ニホン」は沈みゆく日本を照らす光となるか?

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話題の「シン・ニホン」読みました

 日本の問題点と進むべき道を、データと筆者の体験をもとに示した本「シン・ニホン」を読みました。

 この本の少し前に話題になった「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」という本があります。

 こちらは、客観的なデータを元に「世界は少しずつよくなっているよ」ということを、ケースごとに1つずつ示していく本なのですが、この「シン・ニホン」はある意味日本版の「ファクトフルネス」とでも呼ぶべき内容の本だなと感じました。

 ただ、ファクトフルネスが「世界がよくなっている」という良い面にフォーカスしていたのに対して「シン・ニホン」では、日本の直面する多くの課題をデータに基づいたデータとして、まざまざと見せつけられます。

「なんで!ファクトフルネスによると世界はよくなっているんじゃないの!?」

 と言いたくなる人もいそうですが「世界が全体的に少しずつよくなること」と「日本が他の国に比べて相対的に沈みつつあること」は必ずしも矛盾しないのですよね。

シン・ニホンでなされる多くの提言

 「シン・ニホン」では、多くの問題点をデータをもとに指摘していますが、言いっぱなしにするだけでなく、筆者の考える対策も合わせて提言されています。印象的だったものをいくつか紹介します。

データxAI時代の到来

 産業のゲームチェンジが起こって「データxAI」の時代が来たことを語っています。AIに関しては、最近色々な本が出ていますし、ある程度詳しい人なら、知っている内容も多いと思います。このあたりは、どちらかというと日本のソフトウェア業界での遅れや人材育成の課題の説明のための前提説明、序章的な位置付けと感じました。

人材育成

 この本では、全体的に人材育成の重要性と日本の教育の問題点・企業で人材活用面での問題点が書かれていたように思います。具体的な内容は本を読んでもらうとして、個人的には非常に共感する点でした。日本は、教育にお金をかけなさすぎと思います。教育を大事にしない国に待っているのは滅びしかないことは歴史が証明しています。

 仕事でも、産学連携で大学の先生と仕事をすることがあるのですが、非常に優秀な先生が、不遇な扱い(不安定な雇用、決して高くない給与)を受けているケースが多いと感じることが多いです。そりゃ海外の大学や企業に逃げちゃう人を責めれないですよ。

 また企業の人材活用の問題点、特に大企業の人材活用の下手さは感じることが多いです。「我が社にはAI人材が足りない!」とか言いながら、優秀なAI人材に全く関係ない雑用をさせていたりするという話をよく聞きます(あくまで風の噂です)。

 本では、具体例を出して、一つずつデータを元に問題点を指摘していますが、この問題に対する対策は基本的に「もっと金出せ」ですね。

少子高齢化に関して

 自分的にちょっと「オッ」と思った点ですが、一般的に言われている少子化に対しては、グローバルな視点で考えると現状で問題ない(少子化のままで良い)というのが、いわゆるマスメディアでよく見る「少子化対策が必要」という意見とは異なっていて印象的でした。私自身も少子化は世界的な人口増・食料・環境問題を考えると、むしろ好ましいことと考えていたりします。まぁ、少子化に関しては日本は、当面続くことが決定的ですね。

 筆者が更に、尊厳死(安楽死)の合法化まで提案していたのはちょっと驚きました。なかなか提言しずらい内容ですよね。特に政治家は絶対に自分から言えない内容でしょう。票を持っているの、高齢者ですからね。それだけ日本の少子高齢化が切羽詰まっていることの裏返しなのだと思います。

まとめ

 「シン・ニホン」を読んだ感想を書きました。単なる楽観論でもなく、悲観論でもなく、課題をファクトベースで指摘して、その問題点にしっかり向き合い具体的な提言までしている点が印象的でした。

 話題は重いですが、結構読みやすく内容も、過去の日本に学ぶ例など面白く含蓄に富んだ話が多く、楽しみながら最後まで読めました。ちなみに、ファクトフルネスは途中で飽きて挫折しました(笑)

 途中で「風の谷」とか「攻殻化」といった単語が出てくることから分かるように、筆者はサブカルチャー好きないようなので、漫画や映画が好きな人はニヤリとするところも多いと思います。そもそもタイトルの「シン・ニホン」も「シン・ゴジラ」から来ていますからね。

 正直、提言は素晴らしいものの、今の日本でこれをどれだけ実行できる可能性があるのか、絶望感を感じるのも事実です。本の中では、20年ごとに式年遷宮ですべてを白木で作り直す伊勢神宮を例に出して、日本はゼロベースでやり直すのが板についている。明るくやりなおすべきと書かれています。

 今はひょっとしたら、ゼロベースでやり直すということに関しては、良いタイミングなのかもしれないですね。この本を多くの人が読んで、日本の未来に関して考える人が増えると、日本も良い方向に向かうのでは?と思うのはいささか楽観的でしょうか?

 本では「シン・ゴジラ」に出てくる内閣官房長官代理が、ゴジラという未曾有の危機にたち向うときに放つセリフも引用されています。

「この国はスクラップ&ビルドでのし上がってきた。今度も立ち上がれる」

 映画「シン・ゴジラ」では、日本に壊滅的な被害を与えたゴジラを封じ込めることに成功し、再興への希望を示しつつ幕を閉じました。現実の日本も、そうであることを願っていますし、そのためにできることを少しでもしたいですね。

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