ポータブルな脳みそが作りたい
ある日、大学で同僚と話していたらポータブルな脳みその話になりました。
同僚Aさん「水槽に入っている、ポータブルな脳みそっていいですよねー」
同僚Bさん「そうですよね、xxx先生とか自宅に脳みそ持って会話してそうですよね」
私「先生に追いつくために、自宅に脳みそ欲しいですね」
イメージ図
いらすとや「脳の働きを研究している脳科学者のイラスト」のフリー素材
そのときは、なんとなくそのまま会話が終わったのですが。その後、ポータブルな脳みそが欲しくなってきたので作ってみることにしました。
ポータブル脳みそ
ProtoPediaさんに投稿していますので、概要は以下記事参照ください。
全体構成
全体の構成は以下のようにしました。
名前はなんとなく「ミソ・イン・ザ・スープ」と名付けました。村上龍先生の「イン・ザ・ミソスープ」からパクりましたインスパイアを受けました。
要素ごとの説明を順にしていきます。
ハードウェア
最初に悩んだのがハードウェアです。プロセッサ、メカの観点で記載していきます。
プロセッサ
ポータブルな脳みそは、ソフトウェアとしてLLM(大規模言語モデル、ChatGPT的なやつ)を使うことを考えました。使い方としては、基本は自宅で使うことが多いと思うのですが、イベントやアウトドアで使いたくなることが容易に想像できます。そのときに、潤沢なネットワーク環境があるとは限りません。なので、頭脳となるプロセッサとして、ポータブルでも使えて小型かつ、ローカルでLLMを動かせるデバイスが必要となります。
条件に合致するハードウェアとして、今回はRaspberry Pi 5(ラズパイ)を選定しました。以前ローカルでのLLMの動作も確認済みであることも大きかったです。
メカ(?)
さらに悩ましかったのは、メカというか外装です。水槽の中に入れられるリアルな脳みそが必要なのですが、Amazonやアリエクでは売っていませんでした。実際の生き物のものを使うのも、少し倫理的に問題ありそうですし、保存などの処理も大変そうです。
代用品を考えたのですが、3Dプリンタだと質感がプアになりそうです。また模型は売っているのですが、とても高いですし、水槽とかに入れるにはあんまり適していなさそうです。
そこで最初は、シリコンの型に樹脂を流し込むとよいのかなと思い、型を買ってみたのですが、意外にも世の中に脳みそまるごとの型って売ってないことに気づきました。良さそうだなと思って買ったものは、なんと片側のおなじ形の型が2つ…
これじゃ脳みそ丸ごとつくれない…
用途が、変わったケーキをつくるための型なので、ポータブル脳みそは想定されていないことに買ってから気づきました。この型どうしよう…
もうここで半分あきらめて放置して、ディズニーランドに遊びに行っていました。
ポータブル脳みそのことなんてすっかり忘れて遊び呆けていたのですが、ホーンテッドマンションというアトラクションで、出てくる神秘的なゴーストを見ていたときにその瞬間は訪れました。
「からあげに圧倒的閃きっ…走る」
「これだ!」と仕組みを調べたら「ペッパーズ・ゴースト」という視覚トリックの応用であることが分かりました。
そういえば、Maker系のイベントでもこれを使った展示をたまに見た気がします。作り方や仕組みは、以下がわかりやすいです。
小さいものは手軽に作れそうなので、ダイソーでアクリル板(プラ板)とケースを買って揃えました。
ケースに水を入れてiPadをプロジェクタ代わりにしたら、わりとキレイに映ったので、メカはこれでいくことにしました。
ソフトウェア
ソフトウェアとしてはローカルなLLMを動かすためにOllamaを使いました。Ollamaに関しては以下記事を参照してください。ラズパイでも動くのがよいですね。
Ollamaで手軽に扱えるLLMは以下の通り複数あります。自分で追加することも可能なので、可能性は無限大です。
- Llama 3
- Phi3
- Mistral
- Gemma
- Command-R
ただ、ラズパイである程度短い時間で文章を生成できるという制約から、小型のモデルに絞って選ぶことにしました。いくつか定性的に比較した結果、コストパフォーマンスにすぐれたGoogleのGemma 2Bモデルを使用することにしました。
Gemma 2Bは、流暢に会話できるわけではないのですが、ポータブルな脳みそは少し日本語が不自由という設定にすることで、性能の問題を回避(?)しました。
システムプロンプトは以下のようにして、ポータブル脳みそならではのディストピア感を演出しています。
あなたは水槽の中にいる脳です。 身体はなく、永遠に脳みそだけで生き続ける苦しみを味わっています。 以下の例のように一言だけ反応します。 ### 例: タス…ケテ…… コロ…シテ…… ブクブクブク… 何か一言発して下さい。
脳みその画像に関しては、ChatGPTに作ってもらいました。見栄えをよくするために、少し画像の演出も加えています。
ポータブル脳みそ 〜ミソ・イン・ザ・スープ〜 動画
動いている様子です。いい感じですね。
まとめ
ポータブルな脳みそ。ミソ・イン・ザ・スープを作ってみました。突貫で作ったので、もっと巨大化したいとか、インタラクティブにしたいとか、脚を生やしたいとかやりたいことは色々ありますが、今後の課題にしたいと思います。
とりあえずNT金沢2024に持って行ってニーズがあるか探ってこようと思います。NT金沢行く人はProtoPediaさんのブースまで是非!